~北米放射線学会RSNA2024参加レポート~
2024年12月開催の第110回北米放射線学会 RSNA2024に参加してきました。
専門である乳房画像診断とAIについて、勉強してきた内容を共有させていただきます。
【 2024 Dec 1 Sun - Day 1 -】
〇乳房ハイリスク病変のマネジメント
診断的VAB(DVAB)の有用性、欧州よりガイドライン。
〇AI-CADのみでマンモグラフィ検診はありか?
精度: AI+radiologist > AI1+AI2
〇非浸潤性乳管癌の取り扱い
ホルモン療法で再発予防効果、ただし生命予後は変わらず。閉経前女性ではアロマターゼ阻害薬に軍配
参考臨床試験: NSABP B-24, B-35, TAM01, RENAISSANCE Trial, TBCC-ARO DCIS Trial
〇 AI and opportunistic screening tools
目的外撮影CTやMRIからAIを使って
骨密度
内臓脂肪、皮下脂肪、骨格筋の量
冠動脈石灰化 (NOTIFY-1 Trial)
などを評価
〇巨人のアジト(Microsoftの展示ブース)に潜入
彼らの医療機関へのサービスは
1 Copilotを使ったストリームライン
2 読影補助とレポート作成補助
3 研究補助
らしい。
1は、例えばTeams上でカンファレンスをして、内容をワードやパワポに要約、と言ったもの。
ネットで調べたところ、それによく似た資料が。
https://adoption.microsoft.com/.../Microsoft-Copilot...
現地スタッフ(英語圏)に聞き取り調査したところ。日本語でも対応可能、らしい。。
・・本当か?
後日、日本支社から連絡してくれるとのこと。
【 2024 Dec 2 Mon - Day 2 -】
〇Plenary Lecture
この日のハイライトは循環器内科医でもありまた作家でもあるという、Dr Eric TopolによるPlenary Lecture "AI' Transformation of Medicine"でした。
https://dailybulletin.rsna.org/2024/tue/tue01
Dr Eric Topolについて。(https://x.com/erictopol)
70歳になられるそう。来年5月に「Super Ager」という本を出すようです。
かくいうご本人は、日本人からするとぱっと見おじいちゃんですが、、中身とても若そうです。
何しろ講演の情報量がとんでもない^^;
これをこなせる70歳、たしかに”Super Ager”かもしれません。
たくさん著書があるようですが、日本語になっている本は2019年の「ディープメディスン」のみ。英語版では非常に評価が高いのですが、翻訳がいけていないのか、日本語版はあまり評価されていないようで残念です。
講演の概要)
ここ数年のAIがどのように医学を、医療を変えつつあるのか。
AIによるマンモグラフィや大腸内視鏡の診断補助に始まり、
・眼底鏡画像や心電図、胸部単純CTやMR画像から様々な病気発症および治療予後のリスク診断
・癌提供、各種放射線画像や病理画像等からの基盤モデル(BiomedGPT、MedVersa、AMIE、etc.)の構築
・AI単独で診断した方が、AI+医師よりもパフォーマンスがすぐれている?!という研究の紹介
・ヒト表現型プロジェクト(https://humanphenotypeproject.org/home)におけるAIの貢献
・最新の技術を用いて血液などの小さなサンプルから数千種類のタンパク質を一度に測定する"ハイスループットプロテオミクス"におけるAIの貢献
・患者ケアや癌治療におけるデジタルツインについて
などなど、圧巻の情報量でした。
この講演を聴けただけでも、今回シカゴにわたった甲斐があったと言えるほどです。
(「え?でも、バーチャルミーティングでも聞けるよね」という突込みはスルーさせていただきます)
。。本当はね、
AIに投げ込んで、パパーン、と講演の内容をまとめて、ドヤッ、ってしたかったんですけど。
ChatGPTに頼んでも、Perplexityに頼んでも、Consensusに頼んでも、プロンプト変えても、うまくいきませんでした^^;
私のプロンプトが悪いのか、奴らが、とはいえまだまだなのか。
いずれも、Google先生に投げ込むとしっかり導いてくれますので、よろしければ。
※やっぱね、Google先生、いまだ健在です。
〇AIと人のインタラクション
この日の午後は、「AIをどう作っていくか」とか「AIと人がどのようにかかわりあうと、パフォーマンスが上がるか」といったようなセッションに参加していました。
どうしてもAIそのものの性能に目が行きがちですが、AIに人間がどう反応するか。AIと人間はどうかかわるべきなのか、という話題も、実は相当重要です。
※先日履修していたMITのオンラインコースでもこのテーマは非常に印象的でした。この話は近いうち、自分自身の考えをまとめておきたいと思っています。
以下、印象に残った情報を。。
・AIと初心者医師とのコンビネーションは、専門医と比較して、偽陰性率(あるのに「ない」としてしまう率)は同等だが、偽陽性率(ないのに「ある」としてしまう率)が高くなる(要は、「拾いすぎ」の状態になる)(https://pubs.rsna.org/doi/abs/10.1148/radiol.222176)
・「AIを信じすぎる(過剰依存)」よりも「AIを信じず無視する(過小依存)」ほうがよくない。AIが診断の根拠を説明する「説明可能なAI(XAI)」は、正しいアドバイスを無視する過小依存を減らし、診断精度を向上させる効果がある。(https://osf.io/preprints/osf/4wv8j)
〇この日はそのほか、
- Deep Learning Labの有料セッションに参加。
- 機器展示訪問:AWS(Microsoftと違い、「顧客は医療機関ではなく企業」という印象)、Hologic、United Imaging(Surgical planning toolがすごい)
- 株式会社イリモトメディカル 煎本社長と面談
など充実した一日でした。
おまけ
日中の行脚で疲れ果てたので、夕食はUberEATSで注文し部屋食。
インポッシブルフードの植物肉を使った"インポッシブルワッパー"を始めて実食。
ワッパー、好きで、国内でもよく食べるんですけど。
かなり牛肉に近い。。とはいえ、やっぱり牛肉の方がおいしいかな。25USDなので、約4,000JPYです。。インフレと円安よ。
何より、セットでついてきたレモネードの量がインポッシブルでした笑。
容器、自宅まで持ち帰って軽量したら、ちょうど1L入りました。
【 2024 Dec 3, 4 Tue, Wed - Day 3, 4 -】
○マンモグラフィによる乳癌検診に関するAIの有用性
海外ではすでに、いくつかの前向き多施設研究がおこなわれています。会場に居合わせた韓国の知人によると、2026年には同国からも多施設研究の結果が発表予定とか。そろそろ「AIは乳癌検診にどう使われるべきものか」、世界では輪郭が見えてきたところです。
すでに結果がわかっている研究は以下のとおり:
1. ScreenTrustCAD
スウェーデンでの前向き研究。AIを用いたマンモグラフィ検診の有効性を評価。
AI+1名の放射線科医による読影は、従来の放射線科医2名によるダブルリーディングと同等の乳がん検出率を示し、放射線科医の作業負担を軽減する可能性を示唆。
https://www.thelancet.com/.../PIIS2589-7500(23.../fulltext
2. MASAI(Mammography Screening with Artificial Intelligence)
無作為化比較試験。AIを用いたマンモグラフィ検診のトリアージ戦略を評価。AI支援により、二重読影の必要性を減少させつつ乳がん検出率が向上。
https://www.thelancet.com/.../PIIS1470-2045(23.../abstract
3. IMa-L2
デンマークのコペンハーゲンで実施。AIの導入により症例をトリアージし、検診精度各指標の向上と読影効率の改善を確認。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38832880/
4. ScreenTrustMRI
ハンガリーで実施された大規模前向き研究。正常と判断された症例について、AIがマンモグラフィからリスクを評価し、高リスクと判定された症例に対して乳房MRIによる追加検診を実施したところ、高い確率で乳癌を発見することに成功。
https://www.nature.com/articles/s41591-024-03093-5
メタアナリシスレベルでは、DBTに対するAIの有用性なんかもすでに報告されているようですね(https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37219445/)。
〇Social AI
火曜日のplenary lectureはDr Nicholas Christakisによる”social AI”について。
(https://humannaturelab.net/director)
- AIによるグループワークの効率化(https://www.nature.com/articles/s41467-024-49528-y)
- AIによる人間関係の促進(頼りないAIにグループをファシリテートさせるとグループメンバーの結びつきが促進する https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.1910402117)
- AIの導入による従来の社会的規範破壊の危険性(https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2307804120)
- AI登場による人間の能力の飛躍的な向上(アルファ碁以降、プロ碁打の能力は格段に上がったらしい https://www.pnas.org/doi/10.1073/pnas.2214840120)
など、AIのもたらす社会的な側面についての講義でした。https://pubs.rsna.org/doi/full/10.1148/radiol.222176
AIの話はどうしても、AIそのものの性能の高さや欠点に目が向きがちですが、それによって人間がどう反応するのか、という側面も、知見を蓄積していく必要がありますよね。僕個人としてもこの分野は非常に興味を持っています。
○BI-RADS update
新版出る出る詐欺継続中のBI-RADS。
昨年の発表を概ね踏襲していましたが、いくつかマイナーな変更点もあり。最終盤公表までにはまだ調整が必要な様子ですね。
今の時点での速報をここで詳述することに意義をあまり見出せず、、以下略。
○機器展示会場におけるAI企業のプレゼンスについて
機器展示会場内の一画に、AI企業を集めたコーナー”AI showcase”があります。
AI心なしか、昨年より活気を取り戻した印象を持ちました。生成AIが業界の板についてきたからか?などと勝手に思っていますが、、どうでしょうね。
また、
放射線科業界では造影剤メーカーとして知られるバイエルがAIを扱っている様子が目に止まりました。
どうもGoogle Cloudはじめ、AI取扱各企業と協業している様子。日本でのサービスはまだなのかもしれませんが。居合わせたスタッフの方に、日本支社からのフォローを依頼しました。
〇Deeplearningを利用した乳癌発症リスク
紹介されていたエビデンスを:
- A Deep Learning Mammography-based Model for Improved Breast Cancer Risk Prediction
https://pubs.rsna.org/doi/10.1148/radiol.2019182716
- Use of an Al Score Combining Cancer Signs, Masking, and Risk to Select Patients for Supplemental Breast Cancer Screening
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38591971/
- Toward robust mammography-based models for breast cancer risk
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33504648/
- Optimizing risk-based breast cancer screening policies with reinforcement learning
https://www.nature.com/articles/s41591-021-01599-w
〇再びMicrosoft
機器展示内の”Innovation theater”でMicrosoftがショートレクチャーを。出発直前に立ち寄り。
やっぱり大入りですね。。
”Foundation models for healthcare in AI Foundry portal”というのが紹介されていました。これもリンク貼っておきます。
https://learn.microsoft.com/.../heal.../healthcare-ai-models